イコライザ(一般に「EQ」と略記されます)を使うと、特定の周波数帯のレベ
ルを変更して、受信するオーディオのサウンドを形成することができます。
イコライゼーションは、ミュージックプロジェクトとビデオのポストプロダク
ション作業で最も一般的に使われるオーディオ処理の 1 つです。EQ を使うと、
特定の周波数または周波数範囲を調整することによって、オーディオファイル、
楽器、またはプロジェクトのサウンドをわずかにも大きくも変化させることがで
きます。
すべての EQ には、特定の周波数を変更せずに通過させ、その他の周波数のレベ
ルを上げ下げ(ブースト/カット)する特殊なフィルタが使われます。一部の
EQ は、広範囲の周波数をブーストまたはカットするために、大きなブラシのよ
うにして使うことができます。そのほかの EQ として、特にパラメトリック EQ
およびマルチバンド EQ は、より精細な制御に使うことができます。
最もシンプルなタイプの EQ はシングルバンド EQ で、ここには Low Cut、High
Cut、Low Pass Filter、High Pass Filter、Low Shelving EQ、High Shelving EQ、Parametric
EQ が含まれます。
Channel EQ、Fat EQ、および Linear Phase EQ などのマルチバンド EQ には 1 つのユ
ニットに複数のフィルタが組み合わせられていて、広範囲の周波数スペクトラム
を制御できます。マルチバンド EQ では、各周波数スペクトラム帯域の周波数、
帯域幅、Q 値を個別に設定できます。これにより、個別のオーディオ信号でも
ミックス全体でも、ソースを問わず幅広く精細な音作りが可能になります。
「Final Cut Pro」には、さまざまなシングルバンドおよびマルチバンド EQ が含ま
れます。
この章では以下の内容について説明します:
•
AutoFilter
(ページ 52)
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Channel EQ
(ページ 58)
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Fat EQ
(ページ 62)
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Linear Phase EQ
(ページ 63)
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イコライザ
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AutoFilter
AutoFilter は汎用的なフィルタエフェクトで、ユニークな機能をいくつか持って
います。典型的なアナログスタイルのシンセサイザーエフェクトの作成や、クリ
エイティブなサウンドデザインのツールとして使用することができます。
このエフェクトは、しきい値パラメータを使って入力信号のレベルを分析するこ
とで機能します。しきい値を上回る信号は、シンセサイザースタイルの ADSR エ
ンベロープまたは LFO(低周波オシレータ)をトリガするために使われます。こ
れらのコントロールソースは、フィルタカットオフを動的にモジュレートするた
めに使われます。
AutoFilter を使うと、異なるフィルタ・タイプやスロープの選択や、レゾナンス
の量の調整、力強いサウンドにするためのディストーション、オリジナルのドラ
イな信号と処理済みの信号をミックスするなどの操作も可能です。